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    日時
    • 2020年5月6日(水)16:00-17:00
  • 場所
    • Zoom会議(参加が確定した方にURLを前日までにお送りします。)
  • 対象者
    • 上智大学の学生限定。先着30名。
  • 主催
    • 上智大学グローバル・コンサーン研究所
  • お申込み
    • 定員に達したため、受付を終了しました。
  • お問合わせ
    • グローバル・コンサーン研究所 i-glocon@sophia.ac.jp
第3回 三浦まり先生からのメッセージとトーク・セッション
ジェンダーの視点から考える新型コロナウィルスへの対応

三浦まり

 私の専門はジェンダーと政治です。ジェンダーの視点から日本の政治を研究しています。日本政府が新型コロナウィルス感染に対して有効な政策を打ち出せていない理由の一つにジェンダー視点の欠如があると思っています。

 UN Womanは多くの人が自宅で過ごさなくてはならなくなったことで、ドメスティック・バイオレンス(D V)が「影のパンデミック」として広がっていると警告しています(https://japan.unwomen.org/ja/news-and-events/news/2020/4/violence-against-women-and-girls-the-shadow-pandemic)。女性にとって自宅は安心して過ごせる場所であるとは限りません。実際に、多くの国でD V被害が30%増したと報告されています。相談窓口にたどり着けたらまだいいのかもしれません。家の中で監視され、相談機関に連絡を取れない人もいることでしょう。

 日本政府もD V被害の拡大を懸念し、S N Sでの相談事業を拡大しています。ところが、これから1人10万円給付される特別定額給付金が「世帯主」に受給権があると定められてしまったため、世帯主から住所を知られないように避難しているD V被害者が受け取ることを難しくしています。現在、多くの女性団体や女性議員たちが動き、D V被害者に給付金が届くよう運用の改善を行っています。しかし、問題はそれだけではなく、世帯主と同居しているD Vや虐待の被害者が確実に受け取れるのかということもあります。

 学生の皆さんも10万円を受給する権利があります。それなのにどうして、「世帯主」が世帯分をまとめて受け取るような制度になっているのでしょうか?初めから「個人」を対象として給付する仕組みになっていたら、世帯主(多くの場合は夫、父ですね)から暴力を受けたり虐待されたりしている人にも届くはずです。すべての家族が仲良く、平等な関係を築いているとは限りません。それなのになぜ、個人単位ではなく家族単位なのでしょうか。そして、なぜ「世帯主」なのでしょうか。

 ジェンダーの視点からは、他にも気になる点があります。3月に突然一斉休校となり、小学校休業等対応支援金というのが給付されることになりましたが、政府は風俗営業等関係者を支給対象から外すという方針を掲げました。これは明らかな職業差別

 で、当事者団体が抗議の声をあげ、女性議員も多くが反対をし、その結果、政府は後になって支給対象に風俗営業等関係者含めるよう方針転換をしました。

 また、マスクや防御服が足りないからと休業中のA N A従業員に縫製をさせるというアイディアが出たり、スーパーでの混雑を緩和するためには買い物に時間をかけない男性がやった方がいいというコメントを市長が出したりしています。女性に裁縫などの「銃後の守り」を期待してみたり、あるいはノロノロと買い物に時間を浪費していると非難してみたりと、発言する人の女性観が透けて見えてきます。

 トーク・セッションでは、ここ1〜2ヶ月の日本政府の対応を振り返りながら、意思決定に携わる人のどのようなジェンダー意識が投影されているのかを考えたいと思います。そして、意思決定がほぼ男性によって独占されていることが、歪んだジェンダー意識に基づいた政府決定につながっていないのか、そのジェンダー意識のために、どういう人がかえって困った状況に陥っているのかを見ていきたいと思います。